マンション売却体験記① 不動産屋、自宅が売れない。

不動産の仕事をしていると、たくさんのマンション売却に立ち会います。

「この価格では少し厳しいですね」

お客様には、そんなことも冷静にお伝えしてきました。

周辺相場を調べて、現在販売中の物件を見て、過去の成約事例を見る。

このマンションなら、だいたいこのくらい。

「売りたい価格」と「売れる価格」は違う。

そんなことは、嫌というほど分かっていたはずでした。

ところが、いざ自分のマンションを売るとなると話は別です。

やっぱり、少しでも高く売りたい!

「この価格では難しい」

頭では分かっています。

分かっているのに、

「でも、市場に出してみなければ分からないじゃないか」

そう考えてしまうんです。

もしかしたら、この部屋をものすごく気に入ってくれる人がいるかもしれない。

この眺望なら。

この間取りなら。

この立地なら。

多少高くても「ここがいい」と言ってくれる人がいるんじゃないか。

普段ならお客様に、

「お気持ちは分かります。ただ、買主様は他の物件とも比較していますから」

なんて説明する側です。

それなのに、自分が売主になった途端、完全に同じことを考えていました。

そして私は、強気の価格で売り出します。

結果――

1か月。

2か月。

3か月。

お問い合わせもほとんどありません。

それでも最初のうちは、

「まだタイミングじゃない」

「もう少し待てば」

と思っています。

ところが、時間が経つにつれて焦り始めます。

ここから不動産屋の悪いところが出ました。

知識がある分、いろいろやり始めるんです。

価格を少し下げてみる。

反応なし。

販売図面を変えてみる。

反応なし。

よし!それなら全部やる!

写真を撮り直して、

コメントを書き直して、

掲載する写真の順番まで変えて、

少しでも広く見せようと物を捨てて、

生活感をなくそうと、物を実家へ移して。

でも、反応なし、、

また価格を触る。

「下げすぎたかな」と思って、今度は上げてみる。

また販売図面を作り直す。

とにかく、策を練る、練る。

しかし、市場は実に冷静。

お問い合わせは、微動だにしない。

無風です。

気がつけば、

8か月が経っていました。

今振り返れば、売れなかった理由は分かります。

というより、当時だって不動産屋としては分かっていました。

正確に言えば、

「その価格を払ってまで、この部屋を選ぶ理由が買主様になかった」

ということです。

不動産の価格は、売主様が決めることはできます。

1億円と付けようが、2億円と付けようが自由です。

でも、その価格で買うかどうかを決めるのは買主様です。

当たり前の話です。

普段は分かっている。

でも、自分の家になると難しい。

長く住んだ家には思い入れがあります。

購入したときのこと。

住んでいたときのこと。

お金をかけたところ。

気に入っているところ。

売主には、その家に対するたくさんの「理由」があります。

一方、初めてその部屋を見る買主様に、その思い出はありません。

あるのは、

「この価格なら、こっちのマンションも買える」

「もう少し出せば、あの物件に届く」

「同じマンションで、以前このくらいで売れている」

という、とても現実的な比較です。

売主になった私は、その当たり前のことを受け入れるまでに8か月かかりました。

たくさんのお客様のご売却に携わらせていただいても、

自分のことになると冷静ではいられない。

この経験をしてから、

売主様から

「もう少し高く売れませんか」

「一度この価格で出してみたいです」

と言われたとき、言葉の聞こえ方が少し変わりました。

以前より、気持ちがよく分かります。

欲張っているわけではないんです。

大切な自分の家だから、少しでも高く評価してほしい。

ただ、それだけなんですよね。

今の私は、最初から「その価格では無理です」と切ってしまうのではなく、

売主様のご希望を伺ったうえで、

「では、この価格で売るためには何が必要なのか」

「どこまでなら試す価値があるのか」

「いつまで反応がなければ作戦を変えるのか」

そこまで一緒に考えることが大切だと思っています。

ただし、

私自身の自宅売却について言えば――

8か月は、さすがにやりすぎました。

疲労困憊でした、、

では、そんな8か月間ほぼ無風だったマンションを、

私は最終的にどうやって売ったのか。

そして、売れない期間に何を間違えていたのか。

次回は、そのあたりを書いてみたいと思います。

マンション売却体験記②へ続きます。