マンション売却体験記② 売主の私を、辞めてみた。

自分のマンションを売りに出してから、しばらくして気づいたことがあります。

私は、不動産屋である前に、

完全に「売主」になっていました。

少しでも高く売りたい。

条件も良くしたい。

せっかく長く住んだ家なのだから、

ちゃんと評価してほしい。

当然のことです。

売主なのですから。

でも、このままではダメだなと思いました。

そこで一度、

「売主の私」を辞めてみることにしました。

売主としての私から、

仲介としての私に、権限を委ねる。

少し変な話ですが、

自分のマンションなのに、

お客様の物件をお預かりしたときと

同じように考えてみることにしたんです。

すると、見えてくる景色が変わりました。

「この設備、直した方がいいんじゃないか」

「今後も使う配管は、本当に大丈夫だろうか」

「買ったあとに、買主様へ迷惑をかけることはないだろうか」

いつもなら、普通に考えていることばかりです。

売主様からマンションの売却を

お任せいただいたとき、

私は売主様のご希望を伺います。

でも、売主様のご希望だけを

見ているわけではありません。

そのマンションを買いたい方は、

どう感じるだろう。

何を不安に思うだろう。

ご購入後、安心して暮らせるだろうか。

売主様と買主様。

両方を見ながら考える。

いつもの私の仕事です。

なのに、自分が売主になった途端、

高く売りたい。

損をしたくない。

手間もかけたくない。

いつの間にか、自分のことばかり

考えていたんです。

そこで、

売主の私は一歩後ろに下がることにしました。

主役は、もちろん売主である私です。

最終的に決めるのも私です。

でも、表に立ちすぎない。

仲介の私の話を聞いて、

「なるほど。それならそうしよう」

と実行する。

そう考えるようになってから、

ようやく、いつもの感覚に戻りました。

仲介の私は、主役ではありません。

あくまで参謀です。

売主様の代わりに決めるわけでも、

自分の考えを押しつけるわけでもない。

売主様がどこへ行きたいのかを聞いて、

そのために何をすべきかを考える。

そして、

同じ方向を向いて、一緒に考えて進む。

普段やっていることです。

自分のマンションを売ってみて、

良い仲介とは、

売主様の言うことを何でも聞く人でも、

正しいことを上から教える人でもなく、

一緒に同じ方向を向いて、

少し先を見ながら歩いてくれる人なのだと思いました。

売主の私を少し辞めて、

仲介の私に任せてみる。

そうしたら、

やっと私は、

いつもの不動産屋に戻ることができました。

そして、もう一つ。

「どんな人が、この家を買ってくれるんだろう」

という気持ちです。

価格や条件だけではなく、

どんな方がこの家を選び、

これからここで暮らしていくのか。

そんなことも、本質的に

気になるようになりました。

③では、実際にこのマンションを買ってくださった買主様が、どんな方だったのか。

そして、その方に出会うまで、

売主として私がどんなことを考えていたのか。

そこまでの気持ちも含めて、

綴ってみたいと思います。